退職後すぐに再就職する場合は、この3つの比較とは別に考える
退職後すぐに新しい勤務先で厚生年金・健康保険に加入する場合は、任意継続・国民健康保険・家族の被扶養者という3つの比較の対象にはなりません。空白期間(退職日の翌日から新しい勤務先の資格取得日の前日まで)が生じる場合は、その期間だけこの3つのいずれかを選ぶ必要があります。空白が1日でもあれば、その日は健康保険の被保険者ではない期間になります。
任意継続の加入条件:継続して2か月以上の被保険者期間が必要
任意継続の被保険者になるには、資格喪失日の前日までに、健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あることが必要です。退職した会社だけで2か月なくても、対象になる健康保険(協会けんぽ・健康保険組合等)の被保険者期間が1日も空かずに通算して2か月以上あれば対象になり得ます。健康保険組合等では提出先・必要書類・保険料の計算方法が協会けんぽと異なる場合があるため、退職前に加入していた保険者へ確認してください。
任意継続の申出期限:資格喪失日から20日以内に到着する必要がある
任意継続の申出は、資格喪失日(通常は退職日の翌日)から20日以内に、保険者へ到着する必要があります。20日目が土曜・日曜・祝日等の休日に当たる場合は、翌営業日が期限になります。郵送で提出する場合は、消印の日付ではなく到着した日を基準に20日以内かどうかが判断されます。「20日を過ぎてもいつでも加入できる」「退職後に比較してからゆっくり決めればよい」という制度ではありません。
やむを得ない事情による例外は、一律にあるとも、ないとも断定しない
20日の期限や2か月の被保険者期間について、やむを得ない事情がある場合の例外的な扱いを紹介する解説記事もありますが、全国共通の具体的な基準としてこのページで示せるものはありません。例外の可否や具体的な取扱いは、加入していた健康保険の保険者へ速やかに確認してください。「例外は絶対にない」「やむを得ない事情があれば必ず認められる」のどちらも断定せず、期限が迫っている場合や過ぎてしまった場合は、退職前に加入していた保険者(協会けんぽ・健康保険組合)へ速やかに確認してください。
任意継続の資格喪失:本人の希望でやめる場合は受理した月の翌月1日
任意継続の資格喪失事由には、再就職して別の健康保険の被保険者になった、保険料を納期限までに納めなかった、後期高齢者医療制度へ移った、本人が死亡した、任意継続の期間(最長2年)を満了した、本人が任意継続をやめる申出をした(資格喪失申出書)があります。本人の希望でやめる場合(資格喪失申出書の提出)は、保険者(協会けんぽ)が申出を受理した月の翌月1日が資格喪失日になります。「申出書を出したその日にやめられる」「好きな日を資格喪失日に選べる」わけではありません。
任意継続の保険料:事業主負担がなくなり原則全額自己負担
任意継続の保険料は、在職中は事業主が半分程度を負担していたのに対し、退職後は事業主負担がなくなり、原則として全額自己負担になります。単純に計算すると退職前の本人負担のおよそ2倍になりますが、標準報酬月額に上限があるため、退職時の標準報酬月額が高い人は必ず2倍とは限りません。
任意継続の保険料の算定基礎:退職時の標準報酬月額と当該保険者の上限の小さい方
任意継続の保険料は、退職時(資格喪失時)の標準報酬月額を基礎に計算しますが、当該保険者の上限を超える場合は上限額を使います。協会けんぽの令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は320,000円です(前年度から変更なし)。この32万円は協会けんぽの任意継続被保険者に適用される上限で、全国一律ではありません。健康保険組合の任意継続被保険者は、その健康保険組合の平均標準報酬月額や規約により、別の上限になる場合があります。退職前に加入していた健康保険組合があった場合は、その組合の案内で確認してください。
任意継続の保険料率:都道府県別健康保険料率を使う(協会けんぽの場合)
健康保険料率は全国一律ではなく、協会けんぽの場合は都道府県ごとに異なります(都道府県別健康保険料率)。退職前に加入していた都道府県の料率を使うため、全国共通の固定額としては示せません。健康保険組合の場合は、その組合が定める料率になります。実際の料率は加入していた協会けんぽ支部・健康保険組合で確認してください。公式の料率表では、健康保険料率に子ども・子育て支援金率を含めて「都道府県別保険料率」として示している場合があるため、支援金率を重ねて足さないように注意してください。
40歳以上65歳未満は介護保険料が加わる(協会けんぽの令和8年度は全国一律1.62%)
介護保険第2号被保険者(40歳以上65歳未満)に該当する場合は、任意継続の保険料に介護保険料率が加わります。協会けんぽの令和8年度の介護保険料率は全国一律1.62%です(都道府県別健康保険料率とは異なり、介護保険料率は協会けんぽでは全国一律の率が使われます)。健康保険組合の場合は、その組合の料率・扱いになる場合があるため、退職前に加入していた健康保険組合の案内で確認してください。
令和8年4月分から子ども・子育て支援金率が加わる(一般被保険者と任意継続で納付月が異なる)
令和8年(2026年)4月分から、任意継続を含む全国一律の子ども・子育て支援金率0.23%が保険料に加わります。在職中の一般被保険者は令和8年4月分・5月納付分から適用されますが、任意継続被保険者は令和8年4月分・4月納付分から適用されます。健康保険料率・介護保険料率とは別の区分で、都道府県によって差はありませんが、健康保険料率・介護保険料率・標準報酬月額の上限は保険者・年度により変わり得るため、実際の金額は加入していた保険者で確認してください。
任意継続には被扶養者の人数による個別の追加保険料はない
任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額を基礎に計算され、配偶者や子どもを被扶養者にしても、その人数によって保険料が個別に増えることはありません。国民健康保険には扶養という考え方がなく、加入者ごと・世帯単位の算定要素があるため、家族の人数が多い世帯では、この点が任意継続との比較で重要になります。
任意継続の保険料の納め方:毎月払いのほか前納・口座振替等がある
任意継続の保険料は毎月払いのほか、前納(一定期間分をまとめて納める)や口座振替などの納め方があります。納付期限を過ぎると資格喪失につながるため、納め方と期限を保険者へ確認してください。
このガイドの保険料は概算。最終額は保険者の保険料額表・通知で確認する
このガイドの計算例は、標準報酬月額に保険料率を掛けて概算するものです。1円未満の端数は一般的な四捨五入(0.50円以上は切り上げ、0.50円未満は切り捨て)で処理していますが、この処理だけで保険者が発行する保険料額表・納付書の最終確定額と常に一致するとは限りません。実際に納める金額は、退職前に加入していた保険者(協会けんぽ支部・健康保険組合)の保険料額表・通知で確認してください。
任意継続の給付:原則として在職中と同様だが、傷病手当金・出産手当金は対象外
任意継続の被保険者は、医療機関の窓口負担割合は原則として在職中と同様で、原則として在職中と同様の保険給付を受けられます。ただし、任意継続中に新たに発生した病気・けがについて傷病手当金は支給されず、任意継続中に新たに支給要件が発生した出産手当金も支給されません。「任意継続に入れば退職後も新たに傷病手当金が出る」という制度ではありません。
退職前から傷病手当金・出産手当金の継続給付要件を満たす場合は別
退職前から傷病手当金を受給しており、資格喪失日の前日時点で受給できる状態にある場合は、資格喪失後の継続給付として、退職前と同じ傷病手当金を引き続き受け取れることがあります(sickness-allowance-continuation参照)。これは任意継続の給付としてではなく、退職前の被保険者資格に基づく継続給付で、任意継続中に新たに発生した病気の給付とは別の制度です。継続給付の「1年以上の被保険者期間」には、任意継続被保険者・国民健康保険の加入期間は算入されません。
国民健康保険:扶養という考え方がなく、加入者ごと・世帯単位で決まる
任意継続や家族の被扶養者にならない場合は、原則として住所地の市区町村で国民健康保険に加入します。国民健康保険には健康保険の「被扶養者」という考え方がなく、前年所得、加入人数、年齢、市区町村の料率等をもとに、加入者ごと・世帯単位の算定要素で保険料が決まります。退職直後で今の収入がなくても、前年所得により保険料が高額になる場合があります。
国民健康保険の軽減・減免は複数あり、それぞれ別制度
倒産・解雇等の一定の離職理由に該当する場合は、非自発的失業者軽減の対象になり得ます。災害・大幅な収入減等では、市区町村の条例による減免の対象になり得ます。前年所得による7割・5割・2割軽減、非自発的失業者軽減、自治体独自の減免は、それぞれ別制度で、当てはまるものが複数ある場合もあります(nhi-reduction参照)。実際の保険料は市区町村で試算を取得してください。
家族の健康保険の被扶養者:保険料の個別負担は原則ないが、最終認定は家族の勤務先が行う
家族(配偶者・子・父母等の三親等内の親族)の健康保険の被扶養者になれば、本人の健康保険料の個別負担は原則ありません。ただし、被扶養者として認定されるかどうかの最終判断は、家族の勤務先・加入する健康保険(保険者)が行います。失業給付、傷病手当金、出産手当金、公的年金等も収入判定に含まれる場合があります(social-insurance-dependent参照)。
健康保険の被扶養者と国民年金第3号被保険者は別の制度
配偶者の健康保険の被扶養者になっても、国民年金第3号被保険者になるには、配偶者が第2号被保険者であることなど別の要件を満たし、配偶者の勤務先経由で別の届出(第3号被保険者関係届)をする必要があります(pension-category3-enrollment参照)。配偶者以外の家族(子・父母等)は、健康保険の扶養に入れても第3号被保険者にはなりません。
税の扶養、健康保険の被扶養者、国民年金第3号は3つの別制度
税金の配偶者控除・扶養控除、健康保険の被扶養者、国民年金第3号被保険者は、それぞれ判定基準・手続き先が異なる別の制度です。どれか一つに該当するからといって、他も自動的に該当するとは限りません。108,333円・3,611円といった数字は通常の年間収入130万円未満の基準に対応する目安で、一定の障害状態にある場合の180万円基準にはそのまま使いません(pension-category3-enrollment参照)。
健康保険の選択と国民年金の手続きは別々に必要
健康保険をどれにするか決めても、国民年金の手続きは別に必要です。家族の被扶養者にならない場合は、国民年金第1号被保険者への切替(national-pension-switch参照)、配偶者の被扶養者になり第3号の要件も満たす場合はその届出が必要です。健康保険だけ切り替えて国民年金の手続きを忘れると、未納期間が生じる可能性があります。
単純な月額保険料の比較だけで決めない
任意継続・国民健康保険・家族の被扶養者を比較するときは、本人分だけでなく家族全員分の金額、健康保険料・介護保険料・子ども・子育て支援金を含めた総額、国保の軽減・減免適用後の額、任意継続の被扶養者の扱い、傷病手当金等の資格喪失後継続給付の可否、途中で再就職する予定があるか、任意継続の20日期限、家族の扶養認定の可否、国民年金の切替・免除まで、同じ条件でそろえて比較する必要があります。「任意継続を選べば得」「国保にすれば安い」「扶養に入れば常に最善」と言い切れるものではありません。
全国共通の国民健康保険料計算機は用意していない
国民健康保険料は、料率、賦課限度額、平等割・資産割を採用しているかどうかが市区町村ごとに異なり、年度ごとにも変わるため、全国共通で使える確定的な計算機を作ることができません。このガイドの計算例は、算定の考え方を理解するためのもので、実際の金額の見積もりには使えません。実際の金額は市区町村の窓口で試算してもらってください。
退職後の健康保険を選ぶ前に確認すること
- 退職後すぐに再就職して新しい勤務先の健康保険に入るか確認したか
- 空白期間(退職日の翌日から新しい勤務先の資格取得日の前日まで)が生じないか確認したか
- 資格喪失日前日までに継続して2か月以上の被保険者期間があるか確認したか
- 退職した会社だけでなく、通算した被保険者期間で2か月以上あるか確認したか
- 任意継続の申出期限(資格喪失日から20日以内、郵送は到着日基準)を確認したか
- 20日目が休日に当たり翌営業日になるかを確認したか
- やむを得ない事情による例外の有無を、断定せず保険者へ確認したか
- 退職時の標準報酬月額と、当該保険者の上限(協会けんぽの令和8年度は32万円。健康保険組合は別の場合がある)のどちらが低いか確認したか
- 健康保険組合に加入していた場合、その組合独自の上限になり得ることを確認したか
- 都道府県別健康保険料率を、加入していた協会けんぽ支部・健康保険組合で確認したか
- 40歳以上65歳未満で介護保険料が加わるか確認したか(協会けんぽの令和8年度は全国一律1.62%)
- 令和8年4月分から子ども・子育て支援金率0.23%が加わることを理解しているか(任意継続は4月納付分、一般被保険者は5月納付分から)
- 健康保険料率の料率表に子ども・子育て支援金率が含まれていないか確認し、二重に加算していないか確認したか
- 任意継続には被扶養者の人数による個別の追加保険料がないことを理解しているか
- 任意継続の納付期限を過ぎると資格喪失につながることを理解しているか
- 任意継続中に新たに発生した傷病手当金・出産手当金は支給されないことを理解しているか
- 退職前から傷病手当金・出産手当金の継続給付の要件を満たすか確認したか
- 国民健康保険には扶養という考え方がないことを理解しているか
- 国民健康保険の見積りを、住所地の市区町村の窓口で取得したか
- 倒産・解雇等の非自発的な離職理由に該当し、軽減の対象になるか確認したか
- 災害・大幅な収入減等による自治体独自の減免の対象になるか確認したか
- 家族の健康保険の被扶養者になれるか、家族の勤務先・加入する健康保険へ確認したか
- 失業給付・傷病手当金等の受給が扶養認定に影響しないか確認したか
- 配偶者の被扶養者になる場合、国民年金第3号被保険者の要件・届出も別に確認したか
- 配偶者以外の家族は健康保険の扶養に入れても第3号被保険者にはならないことを理解しているか
- 本人分だけでなく家族全員分の金額で比較したか
- 任意継続を本人の希望でやめる場合、資格喪失日は受理した月の翌月1日になることを理解しているか
- 国民年金の手続き(第1号への切替、または配偶者の扶養での第3号)を別に確認したか
- 「任意継続を選べば得」「国保にすれば安い」「扶養に入れば常に最善」と決めつけずに比較したか
最終確認先は、任意継続は退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ支部・健康保険組合)、国民健康保険は住所地の市区町村、家族の被扶養者は家族の勤務先・加入する健康保険です。国民年金の手続きは市区町村・年金事務所・配偶者の勤務先で確認してください。