「火災ならすべて火災保険」ではない
火災保険の本体(損害保険金)では、地震・噴火・これらによる津波を原因とする損害は原則として補償されません。地震が原因で発生した火災も、そこから延焼・拡大した火災も同じ扱いです。つまり、同じ「火災」でも原因が地震かどうかで扱いが変わります。地震による火災に備えるには、火災保険に地震保険を付帯しておく必要があります。まず原因を確認し、そのうえでどの契約で扱うかを判断してください。
「火災保険から1円も出ない」とも断定できない
地震が原因の火災でも、契約している火災保険の商品に地震火災費用保険金や地震火災に関する特約が付いていれば、限定的な費用保険金が支払われることがあります。これは地震保険とは別の補償で、支払条件や限度額は商品・契約プランによって違います。地震保険の代わりになるものではありませんが、「火災保険からは一切支払われない」と決めつけずに、本体の損害補償と費用保険金・特約を分けて契約内容を確認してください。
地震保険は単独では契約できない
地震保険は火災保険に付帯して契約する保険で、地震保険だけを単独で契約することはできません。すでに火災保険を契約している場合、契約期間の途中からでも地震保険を付帯できます。火災保険の更新を待つ必要はないので、付けていない場合は保険会社や代理店へ相談してください。付帯できるのは、その火災保険で契約している対象(建物・家財)についてです。
建物と家財は別々の保険の対象。建物だけでは家財は出ない
地震保険では、建物と家財は別々の保険の対象として扱い、保険金額もそれぞれ設定します。建物だけを保険の対象にしている場合、室内の家財が壊れても家財の保険金は支払われません。逆に家財だけを対象にしていれば、建物の損害は対象になりません。損害の認定も建物と家財で別々に行うため、建物が小半損でも家財は一部損に至らない、といったことが起こります。なお、商品によっては同じ火災保険契約に建物と家財の両方を含められるため、必ず別々の契約書になるという意味ではありません。大切なのは、自分の契約で建物と家財のどちらが保険の対象になっているかで、これは保険証券と契約内容で確認できます。
保険金額は火災保険金額の30%から50%
地震保険の保険金額は、火災保険金額の30%から50%の範囲で設定します。限度額は建物5,000万円・家財1,000万円です。火災保険金額が1億2,000万円でも、50%は6,000万円になりますが、建物の限度額5,000万円が優先されます。ここで注意したいのは、30%から50%という割合の基準が「火災保険金額」だという点です。建物の時価額の50%を一律の上限とする制度ではありません。火災保険金額を新価(再調達価額)で設定しているか時価額で設定しているかによって、地震保険金額が時価額に占める割合は変わります。いずれにしても、再建費用の全額を保証する保険ではありません。
火災保険金額・新価(再調達価額)・時価額を分けて考える
火災保険金額は契約で設定する金額、新価(再調達価額)は同じものを新たに建てたり買ったりするのに必要な金額、時価額は新価から使用による消耗分を差し引いた金額です。この3つは同じではありません。地震保険金額は火災保険金額の30%から50%で決めますが、支払いのときは損害区分ごとの割合に加えて、時価額に対する同じ割合が限度になります。たとえば火災保険金額3,000万円に対して地震保険金額を1,500万円(50%)に設定し、建物の時価額が2,000万円である場合、全損なら通常の計算は1,500万円で、これは時価額の75%に当たります。「時価額の50%までしか出ない」という理解は誤りです。自分の契約が新価・時価のどちらを基準にしているかは、保険証券と約款で確認してください。
住宅ローン残高とは無関係
地震保険の保険金額は、住宅ローンの残高とは関係なく決まります。全損の保険金を受け取ってもローンが消えるわけではありません。被災した住宅のローンが残ったまま、新たな住まいの費用も必要になることがあります。地震保険は生活を立て直すための資金と位置づけ、貯蓄、被災者生活再建支援金などの公的支援、住宅ローンの返済条件の相談と合わせて考えてください。保険金は自由に使えるお金なので、必ず修理に充てなければならないというものでもありません。
実際の修理費がそのまま支払われる保険ではない
地震保険は、損害の認定区分に応じた割合で保険金を支払う仕組みです。修理の見積額がいくらであっても、認定された区分の割合を超えて支払われることはありません。逆に、修理費より保険金が多くなることもあり得ます。火災保険の本体は損害の額を基に算定するのが一般的で、この点が地震保険とは違います。同じ「保険金」でも決まり方が違うと理解してください。
4つの損害区分と、一部損に届かない場合
2017年1月1日以後に保険期間が始まる契約では、全損・大半損・小半損・一部損の4区分で、それぞれ地震保険金額の100%・60%・30%・5%が支払われます。いずれも時価額の同じ割合が限度です。一部損の基準にも届かない損害には、保険金が支払われません。壁にひびが入るなど修理が必要な損傷があっても、認定基準に達しなければ0円になります。古い契約では全損・半損・一部損の3区分のことがあるため、契約の始期日を確認してください。
建物と家財で認定基準が違う
建物は、主要構造部(建築基準法施行令に定める構造耐力上主要な部分)の損害額が時価額に占める割合、または焼失・流失した部分の床面積が延床面積に占める割合で判定します。家財は、家財全体の時価額に対する損害額の割合で判定します。割合の刻みも建物と家財で違うため、同じ「小半損」でも中身は別です。基準の「以上」「未満」は正確に読んでください。たとえば建物の一部損は3%以上20%未満で、20%ちょうどなら小半損の側になります。
津波・液状化には別の認定方法がある
津波による損害や、液状化による建物の傾斜・沈下については、通常の認定基準とは別の方法が定められています。液状化では、建物の傾斜角度や沈下量に着目して区分を判定します。見た目に大きな損壊がなくても認定されることがあり、逆にひびが目立っても基準に達しないことがあります。具体的な基準は日本損害保険協会が公表している損害認定基準で確認し、判断に迷う場合は保険会社へ相談してください。
罹災証明書と保険会社の認定は別の判定
自治体が発行する罹災証明書の被害区分(全壊・大規模半壊・半壊など)と、保険会社の損害認定(全損・大半損・小半損・一部損)は、別々の基準による別々の判定です。罹災証明書で半壊と判定されたから保険でも小半損になる、といった対応関係はありません。罹災証明書は公的な支援や減免の手続きに使い、保険金は保険会社の調査と認定で決まります。どちらか一方の結果をもう一方に当てはめないでください。
地震保険の対象にならない資産がある
地震保険の対象は、居住用の建物と生活用の家財が基本です。通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手、自動車、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・書画・骨とう等、稿本・設計書・図案などは対象になりません。店舗併用住宅の扱い、門・塀・物置などの付属建物の扱いは契約によって異なります。事業専用の建物、商品、業務用の設備は地震保険の対象外で、別の保険で備えます。なお、この対象外資産は地震保険の約款上の区分であり、所得税の雑損控除でいう「生活に通常必要でない資産」とは別の制度です。名前が似ていても中身と根拠が違うので混同しないでください。対象範囲は契約で確認してください。
地震保険料は条件が同じなら会社によらず同じ
地震保険料は、所在地、建物の構造、保険金額、保険期間、割引で決まります。国が関与する制度のため、これらの条件と割引が同じであれば、どの保険会社で契約しても地震保険部分の保険料と補償内容は同じです。ただし、火災保険の本体や付帯する特約は会社・商品によって違うため、支払う保険料の総額まで同額になるとは限りません。地震保険部分と火災保険部分を分けて比べてください。このサイトでは特定の保険会社・商品を推奨しません。
割引はいずれか1つだけ
地震保険には、免震建築物割引(50%)、耐震等級割引(等級3は50%、等級2は30%、等級1は10%)、耐震診断割引(10%)、建築年割引(10%)があります。条件を複数満たしていても、重複して適用することはできず、いずれか1つだけの適用になります。適用には所定の確認資料の提出が必要で、提出した日以後の保険期間について適用されます。契約後に資料が見つかった場合でも、その時点から適用できることがあるため、保険会社へ相談してください。
水災は「外す」「付ける」を一律に決めない
水災の補償を外すかどうかは、住んでいる場所と住まい方で変わります。確認したいのは、洪水浸水想定、内水氾濫の想定、高潮の想定、土砂災害の警戒区域、建物の階数、家財を置いている高さ、地下室や半地下の有無、過去の浸水履歴、そして契約の水災補償の支払条件と免責金額です。ハザードマップポータルサイトや自治体の資料で確認できます。ただし、ハザードマップの想定区域外でも被害が起こらないとは限りません。想定は一定の条件で計算されたもので、内水氾濫や想定を超える降雨では区域外でも浸水することがあります。想定区域外であることだけを理由に水災補償を外すと決めないでください。
水災と水ぬれを取り違えない
水災は、洪水・高潮・土砂災害などによる浸水や流失を対象とする補償です。水ぬれは、給排水設備の事故や他人の戸室で生じた事故による漏水を対象とする補償です。名前が似ていますが別の補償で、水ぬれが付いていても水災が付いているとは限りません。また、地震による津波の浸水は、火災保険の水災ではなく地震保険の対象です。
「劣化した配管からの漏水だから全部対象外」とは限らない
漏水のときは、次の3つを分けて考えてください。①劣化した配管・給排水設備そのものの修理費。②その漏水によって床・壁・天井・家財に生じた損害。③階下など第三者に与えた損害の賠償。多くの火災保険では、①の設備そのものの修理費は水ぬれの補償から除かれています。一方、②の漏水で生じた損害は、水ぬれの補償が付いていれば対象になる場合があります。経年劣化が免責として定められていても、その定め方は約款によって違い、「劣化した設備が原因だから床も家財も一律に対象外」とは限りません。③は個人賠償責任や借家人賠償責任の補償で扱うもので、損害の補償とは別の条件です。どこまでが対象になるかは商品と約款によって違うため、特定の保険会社の商品の条件をすべての契約に当てはめないでください。自分の保険証券と約款で、①②③のそれぞれについて確認してください。
分譲マンションは3つに分けて確認する
分譲マンションでは、共用部分、専有部分、家財の3つを分けて考えます。共用部分は管理組合が契約し、専有部分と家財は各区分所有者が契約するのが一般的です。管理組合が共用部分へ加入していても、専有部分や各世帯の家財まで自動的に補償されるとは限りません。また、管理組合の契約に地震保険が付帯しているかどうかも別の話です。どこまでが共用部分かは管理規約で定められているため、管理規約、管理組合の保険の加入内容、自分の契約の3つを突き合わせて確認してください。
賃貸では建物と家財の契約者が違う
賃貸住宅では、建物は貸主(大家)が契約し、入居者は家財を契約します。入居時に加入する保険には、借家人賠償責任が含まれていることが多いですが、これは借りている部屋を壊してしまった場合の原状回復義務に備えるもので、自分の家財を買い直す費用ではありません。家財の契約がなければ、災害で家財が壊れても補償されません。入居者が契約した家財の火災保険には地震保険を付帯できます。賃貸だから地震保険は不要、と一律には言えません。家財の量と買い直しに必要な金額、貯蓄で賄えるかで判断してください。
事故が起きたときの手順
①身の安全を確保する。②消防・警察・自治体など必要な機関へ連絡する。③安全な範囲で、被害の全体と近景を写真や動画で記録する。④被害の拡大を防ぐための応急処置を行う。⑤保険会社または代理店へ速やかに連絡する。⑥契約内容と保険金請求書類を確認する。⑦修理の見積りを取得する。⑧保険会社の調査を受ける。⑨補償の範囲と自己負担を確認したうえで、本格的な修理の契約を進める。記録を残すことは大切ですが、倒壊のおそれがある建物や立入りが制限されている場所へ、撮影のために戻らないでください。安全が最優先です。
応急処置は支払額の確定を待たなくてよい
屋根にブルーシートをかける、割れた窓をふさぐ、漏水を止める、散乱したガラスを片付けるといった、安全の確保と被害の拡大を防ぐための応急処置は、保険会社の調査や支払額の確定を待つ必要はありません。危険がある場合や、生活の再開に支障がある場合は先に対応してください。待ってから判断したいのは、本格的な修理の契約です。補償の範囲と自己負担がはっきりしないまま本工事を発注すると、想定より自己負担が大きくなることがあります。応急処置をする場合も、着手前と着手後の写真・動画を安全な範囲で残し、見積書と領収書を保管したうえで、保険会社へ速やかに連絡してください。なお、応急処置にかかった費用が必ず補償されるとは限りません。費用が支払の対象になるかどうかは契約内容によって違うため、約款と保険会社への確認で判断してください。
「保険金が使える」と持ちかける業者に注意する
災害の後に「保険金で修理できる」「無料で申請を代行する」と勧誘してくる住宅修理業者とのトラブルが報告されています。実際の損害と異なる内容で請求するよう勧められた場合、虚偽の申請になり、保険金が支払われないだけでなく契約の解除や法的な責任につながります。また、保険金額に対する高額な成功報酬を求められる、途中で断ると高額な解約料を請求される、といった契約内容にも注意してください。保険金の請求は、まず契約している保険会社または代理店へ自分で連絡すれば足ります。契約を急がせる相手とは、その場で契約しないでください。困ったときは消費生活センターへ相談できます。
地震保険料控除は「保険金が増える制度」ではない
地震保険料控除は所得控除で、支払った地震保険料に応じて課税所得を減らす仕組みです。控除を受けても、受け取れる保険金が増えるわけではありません。控除の対象になるのは地震保険料の部分で、火災保険料の全体が対象になるわけでもありません。所得税と個人住民税では限度額も計算方法も異なります。また、一定の要件を満たす旧長期損害保険契約等の保険料については経過措置があり、地震保険料控除とは別の計算になります。控除額の具体的な計算方法は、生命保険料・地震保険料控除のくわしいガイドで確認してください。
受け取った保険金は雑損控除の計算に影響する
災害で損害を受けた場合、所得税の雑損控除を使えることがあります。このとき、受け取った保険金は損害を補填する金額として差し引きます。差し引く順序は決まっていて、まず損害金額から差し引き、保険金が損害金額を超える場合に、その超える部分を災害等関連支出から差し引きます。保険金で損害がほぼ補填されると、雑損控除額が0円になることもあります。保険金を受け取ったことを申告で伏せると、控除額を誤って計算することになります。詳しくは雑損控除・災害減免法のくわしいガイドで確認してください。
保険・公的支援・税の控除は別々の制度
火災保険と地震保険は民間の保険契約、被災者生活再建支援金や罹災証明書は自治体・国の制度、雑損控除と災害減免法は税の制度です。それぞれ根拠も窓口も判定基準も違います。保険金が出たから公的支援が受けられない、罹災証明書が出たから保険金も出る、といった関係にはありません。被災後は、保険会社、自治体、税務署の3方向にそれぞれ確認する必要があると考えてください。
契約内容を確認するときの項目
- 火災保険の保険証券が手元にあるか(建物・家財それぞれ)
- 建物の契約があるか、家財の契約があるか
- 地震保険を付帯しているか(建物・家財それぞれ)
- 地震保険の保険金額は火災保険金額の何%か(30%から50%の範囲)
- 地震保険の保険金額が限度額(建物5,000万円・家財1,000万円)に当たっていないか
- 契約の始期日はいつか(2017年1月1日以後なら4区分、それ以前は3区分のことがある)
- 風災・ひょう災・雪災の補償は付いているか
- 水災の補償は付いているか、支払条件と免責金額はどうなっているか
- 水ぬれの補償は付いているか(水災とは別)
- 盗難、物体の落下・飛来・衝突、不測かつ突発的な事故の補償は付いているか
- 個人賠償責任・借家人賠償責任の特約は付いているか、他の保険と重複していないか
- 地震火災費用保険金など、地震に関する費用補償が付いているか
- 免責金額(自己負担額)はいくらか
- 適用できる割引はあるか(免震建築物・耐震等級・耐震診断・建築年のいずれか1つ)
- 割引に必要な確認資料は手元にあるか
- 住まいの洪水浸水想定・内水氾濫・高潮・土砂災害の状況を確認したか
- 建物の階数、家財を置いている高さ、地下室・半地下の有無
- 過去の浸水履歴を確認したか
- 分譲マンションなら、管理規約で共用部分の範囲を確認したか
- 分譲マンションなら、管理組合の保険に地震保険が付帯しているか
- 賃貸なら、自分の家財の契約があるか
- 賃貸なら、借家人賠償責任が自分の家財の補償ではないと理解しているか
- 門・塀・物置など付属建物の扱いを確認したか
- 地震保険の対象にならない資産(自動車、通貨、有価証券、30万円超の貴金属等)を把握しているか
- 地震保険料控除の対象になる保険料の額を控除証明書で確認したか
補償の有無、免責金額、支払条件、割引の適用可否は契約ごとに違います。最終確認先は契約している損害保険会社または代理店です。浸水想定や土砂災害の警戒区域はハザードマップポータルサイトと住所地の市区町村、罹災証明書は市区町村、税の控除は所轄の税務署で確認してください。