暮らしの疑問から調べる
相続税の事前準備|かかるかの確かめ方・特例・生前贈与・10か月の期限
相続税は、亡くなった後の10か月で財産を調べ、分け方を決め、申告まで済ませる必要があります。元気なうちに財産の一覧や受取人、遺言を整えておくと、残された家族の負担と、特例を使い損ねる失敗を減らせます。生前にできる準備を順番に整理します。
作成・編集:人生のお金手帳編集部 / 最終確認:2026-10-2930秒で分かる要点
結論まず財産を書き出して、基礎控除を超えそうかを確かめます。超えそうなら、使える特例・生命保険・贈与・遺言を早めに整理し、家族と共有しておきます。
- かかるか
- 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。詳しく確認する ↓
- 期限
- 相続放棄は原則3か月/準確定申告は4か月/相続税の申告・納付は10か月詳しく確認する ↓
- よくある失敗
- 特例で税額が0円になる場合も、申告しないと特例は使えません。
- NISAも対象
- NISA口座の株式・投資信託も相続財産に入ります。NISAの非課税は、相続税が非課税になるという意味ではありません。詳しく確認する ↓
- 準備の要
- 財産の一覧・受取人・遺言・家族への共有。
会話で見る:自分の相続、何から準備する?
まず、相続税がかかるかどうか
遺産の総額が基礎控除以下なら、相続税の申告も納付も要りません。まず自分の家がどちら側かを確かめます。
| 法定相続人の数 | 基礎控除 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
遺産がこの金額以下なら、相続税の申告も納付も要りません。ただし、生命保険金や生前贈与などを足して判定するため、預金だけを見て判断しないでください。
- 生命保険金:500万円×法定相続人の数までは非課税ですが、それを超える分は遺産に加えて判定します。
- 生前贈与:亡くなる前一定期間の暦年贈与や、相続時精算課税で贈与した財産は遺産に加算して判定します。
NISAで持っている株式・投資信託も、相続税の対象
「NISAは非課税」と聞くと、相続税もかからないと思われがちですが、違います。NISAは、NISA口座で取得した対象商品の売却益・配当等を非課税にする制度です。非課税になるのは売却益や配当などにかかる税金で、相続税ではありません。
亡くなった人がNISA口座で持っていた株式や投資信託も、ほかの証券口座の分や預貯金と同じく相続財産です。すべてを合計して、基礎控除を超えるかどうかを判定します。
| 財産 | 金額 |
|---|---|
| 預貯金 | 2,000万円 |
| 自宅(評価額の目安) | 1,500万円 |
| NISA口座の投資信託 | 900万円 |
| 合計 | 4,400万円 |
| 基礎控除(2人) | 4,200万円 |
NISAの分を除くと3,500万円で基礎控除の範囲ですが、含めると基礎控除を200万円超え、申告が必要になる可能性があります。金額は説明用の仮定です。
- 下の財産の棚卸しでは、NISA口座の分も「株式・投資信託など」に足して入れてください。金額は、取引報告書や残高の画面で分かる時価を目安にします。
- 相続税での株式・投資信託の評価方法は、国税庁の案内や税理士で確認してください。
- NISA口座の相続手続きや、相続後に相続人の口座でどう扱われるかは、口座のある金融機関で確認してください。
財産を書き出して、基礎控除を超えそうか確かめる
分からない項目は0ではなく、分かる範囲の目安を入れてください。財産がない項目は0にします。入力した金額はこの画面の中だけで計算し、保存・送信しません。
7項目を入れると、基礎控除と比べられます。
この計算は「基礎控除を超えそうか」の目安だけです。相続税の額、土地の評価方法、借入金などの扱い、生前贈与の加算、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は反映していません。超えそうなら、早めに税理士や税務署に相談してください。
生前にできる準備
- 財産と借入の一覧を作る:預貯金(金融機関・支店)、土地・建物、株式・投資信託(NISA口座の分も)、生命保険、借入金を書き出し、どこに何があるかを家族に伝えます。
- 不動産の名義と所在を確かめる:登記簿で名義を確認します。所有不動産記録証明制度(2026年2月2日開始)で、名義人ごとの不動産を一覧で確認できる場合があります。名義が亡くなった親のままの土地があれば、早めに相続登記を済ませます。
- 生命保険の受取人と金額を確かめる:相続人が受け取る死亡保険金の非課税限度額は500万円×法定相続人の数。受取人が誰になっているかで、相続税の扱いや家族の手元資金が変わります。
- 相続人が誰かを確かめる:法定相続人の数で基礎控除や非課税枠が変わります。前の世代の相続が終わっていない財産がないかも確認します(相続人が増える問題)。
- 遺言を準備する:公正証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言は原則として家庭裁判所の検認が不要です。それ以外の自筆証書遺言は検認が必要な場合があります。
- 家族と共有する:一覧・遺言の保管場所・相談先(税理士・司法書士)を家族に伝えておきます。
使える特例は、申告が前提
- 配偶者の税額軽減:配偶者が取得した遺産は1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い方まで相続税がかかりません。適用には申告が必要です。
- 小規模宅地等の特例:住んでいた土地は330㎡まで評価額を80%減額できます。申告期限までに誰が取得するかが決まっていないと使えません。
- 死亡保険金の非課税枠:相続人が受け取る死亡保険金の非課税限度額は500万円×法定相続人の数。
- 死亡退職金の非課税枠:死亡退職金の非課税限度額は500万円×法定相続人の数(生命保険金の非課税枠とは別枠で、あわせて使える)。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額が0円になる場合でも、申告しなければ特例は適用されません。「0円だから何もしない」が最も多い失敗です。
小規模宅地等の特例は、申告期限までに誰が取得するかが決まっていないと使えません。分け方を生前に話し合っておくことが、特例を使えるかどうかに直結します。
生前贈与で気をつけること
生前にお金や不動産をもらうと贈与税がかかります。使える枠は2種類あり、片方は一度選ぶと元に戻せません。
- 暦年課税は「もらう人」1人あたり年110万円まで非課税。相続時精算課税は年110万円の基礎控除に加えて累計2,500万円まで贈与税がかからず、相続時に精算します。
- 110万円は「あげる人ごと」ではなく「もらう人ごと」の枠です。3人から100万円ずつ受け取れば合計300万円として課税されます。相続時精算課税を選ぶと、その相手からの贈与は暦年課税に戻せません。
- 亡くなる前一定期間の暦年贈与は相続財産に加算されます。加算期間は3年から7年へ段階的に延長中で、3年を超えるのは2027年以降の相続から、7年分すべてが対象になるのは2031年1月以降の相続からです。
- 相続開始前3年超7年以内に受けた贈与は、合計100万円までは加算しません。直近3年分は全額が加算対象です。
- 2024年以降の贈与は、年110万円以下なら贈与税の申告が不要で、相続財産にも加算しません。
- 夫婦間の居住用不動産の贈与の配偶者控除:基礎控除110万円に加えて最高2,000万円まで控除(合計で最高2,110万円まで贈与税がかからない)。婚姻期間20年以上・居住用不動産(または取得資金)・贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し引き続き住む見込み、といった要件があり、同じ配偶者からは一生に一度しか使えません。
まとまった額を家族に移す前に、どの制度を使うか、申告が要るかを税務署や税理士で確認してください。
亡くなった後の期限(家族が知っておくこと)
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 相続放棄 | 原則3か月 |
| 準確定申告 | 4か月 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月 |
| 相続登記 | 取得を知った日から3年以内 |
いずれも死亡日だけでなく、相続開始を知った日など法定の起算点を確認。
遺産分割協議が終わっていなくても、相続税の申告・納付期限は自動的には延長されません。未分割のまま申告し、後日修正する方法等を税理士へ確認してください。
よくある失敗
- 特例で税額が0円になるからと、申告しなかった(特例が使えなくなる)。
- 贈与の非課税枠を「あげる人ごと」と思い込み、複数人から受け取って枠を超えた(110万円は「あげる人ごと」ではなく「もらう人ごと」の枠です)。
- 分け方がまとまらず、申告期限までに小規模宅地等の特例の取得者が決まらなかった。
- NISAの分は非課税だと思い込み、財産の一覧から外して基礎控除の判定をした。
- 生命保険の受取人が古いままで、想定と違う人が受け取った。
- 相続人が受け取る場合は500万円×法定相続人の数までの非課税枠がありますが、相続放棄をした人はこの非課税枠を使えません。
よくある疑問
うちは財産が少ないから、準備はいらない?
基礎控除以下なら相続税はかかりませんが、預金の解約、不動産の名義変更、保険金の請求などの手続きは必要です。財産の一覧と保管場所を家族に伝えておくだけでも、手続きの負担が大きく減ります。
NISAで持っている投資信託にも相続税はかかる?
かかる場合があります。NISAで非課税になるのは売却益や配当などにかかる税金で、相続税ではありません。NISA口座の分もほかの財産と合計し、基礎控除を超えれば相続税の対象になります。詳しくは上の「NISAで持っている株式・投資信託も、相続税の対象」を見てください。
生前贈与をすれば相続税は減る?
亡くなる前一定期間の贈与は相続財産に加算されるため、亡くなる直前の贈与は減税になりにくくなっています。加算期間の延長や相続時精算課税の扱いは「生前贈与で気をつけること」を見て、具体的な計画は税理士に相談してください。
相続税の計算はこのサイトでできる?
このサイトでは、基礎控除を超えそうかの目安までを確かめられます。税額の計算や土地の評価は、国税庁の案内や税理士で確認してください。相続税の申告要否ツールも使えます。